まだ予約していない病院。三日前から「今からかけよう」と思っている電話。手の中で震える電話が鳴りやむのを待ち、そのあと留守電が入っていないか確かめる。電話が怖いと感じるのは、決してめずらしいことではありません。メッセージでのやりとりに慣れて育った世代なら、なおさらです。
電話が怖いのは、ばかげたことでも性格の欠点でもありません。電話は実際に、多くの会話よりも難しいものです。そしてうれしいことに、この怖さもほかの不安と同じように練習で小さくなり、その練習はごく小さなところから始められます。
電話が対面より難しく感じる理由
**表情が見えない。** 対面なら、笑顔やうなずき、眉をひそめる様子を見て、話し方を調整できます。電話では声しかないので、ちょっとした間も実際より長く感じられます。
**考える時間がない。** メッセージなら五回でも書き直せます。電話はその場で進みます。言葉をきちんと選びたい人ほど、このコントロールできない感じが怖く感じられます。
**答えに詰まる不安。** 答えられないことを聞かれたら?名前を聞き間違えたら?沈黙ができたら?頭の中の電話は、たいてい現実の電話よりずっと悪い展開になります。
電話は、思っているよりうまくいく
研究者のアミット・クマールとニコラス・エプリーは、昔の友人に連絡を取ってもらう実験を行いました。メールで連絡する人と、電話で連絡する人に分けたのです。事前には多くの人が、電話のほうが気まずく、得られるものもあまり変わらないと予想していました。ところが実際には、電話のほうがメールよりはっきりと強いつながりを感じさせ、気まずさも変わりませんでした。私たちは、いちばん距離を縮めてくれるはずの連絡手段を、かえって避けてしまいがちなのです。
対人不安の研究でも、同じパターンがくり返し見られます。私たちは物事がうまくいかない度合いを大きく見積もり、相手のやさしさを小さく見積もります。
電話への苦手意識を減らす七つのステップ
1. いちばん楽な「声」から始める
知らない人に電話する前に、ほとんど何もかかっていない場面で声を使ってみましょう。友達への返信を、文字ではなくボイスメッセージにする。次に、気楽に話せる人に電話して、メッセージの代わりに10分話す。練習しているのは難しい会話ではなく、電話という手段そのものです。
2. 最初のひと言を書いておく
不安の大部分は、最初の5秒に集まっています。電話をかける前に、最初のひと言を書いておきましょう。「もしもし、来週の予約をお願いしたいのですが。〇〇と申します」。生年月日や都合のいい日など、聞かれそうなことも一つ二つメモしておきます。完璧な台本はいりません。必要なのは手すりです。
3. 失うもののない電話から
うまくいかなくてもほとんど困らない電話を選びましょう。お店に閉店時間を聞く、レストランに空席があるか尋ねる、薬局に商品の在庫を確かめる。どんな答えが返ってきても、それで十分です。
4. 「準備ができるまで」待たない
落ち着くまで待っていると、電話は何週間も先延ばしになります。時間を決め、メモを目の前に置き、まだ少し緊張しているうちにかけてしまいましょう。緊張はたいてい、話し始めて最初の1分で落ち着きます。
5. 困ったときのひと言を用意する
いちばん怖いのは、予想外のことが起きたときに何と言えばいいかわからないことです。ほとんどの場面は、このひと言で乗り切れます。「すみません、もう一度お願いできますか」。残りは、もうひと言で大丈夫です。「確認して、折り返しお電話します」。どちらも使っていいのです。
6. いつもは出ない電話に一度だけ出る
かかってくる電話は、準備する時間がないぶん、かける電話より難しく感じられがちです。かけるほうに慣れてきたら、知っている番号からの電話で、いつもなら留守電に任せてしまうものに一度出てみましょう。
7. 実際どうだったかに目を向ける
電話の前に、終わったあとどれくらい怖いと感じそうかを1〜5で予想します。終わったら、実際にどうだったかを1〜5でつけます。たいていは実際の数字のほうが低く、その差を何度か目にすることが、どんな励ましよりも効きます。
最初のステップ表
| 段 | 試すこと | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 1 | 友達への返信を、文字ではなくボイスメッセージにする | 1分 |
| 2 | 気楽に話せる人に電話して、メッセージの代わりに10分話す | 10分 |
| 3 | お店やレストランに簡単な質問の電話をする | 2分 |
| 4 | 最初のひと言を書いてから、電話で予約をする | 5分 |
| 5 | ずっと先延ばしにしていた電話をかける、またはいつもは出ない電話に出る | 5分 |
その段が当たり前に感じられるまでとどまり、それから一段上がりましょう。大きすぎると感じたら、間にもっと小さな一歩をはさんで大丈夫です。
緊張以上のものかもしれないとき
電話への不安のせいで、病院に行く、仕事の連絡をする、支払いの手続きをするといった大切なことができなくなっているなら、あるいはそれが人からどう見られるかへの広い不安の一部なら、社交不安症かもしれません。よくある病気で、治療もよく効きます。認知行動療法にはしっかりした根拠があります。どうか医師や心の専門家に相談してください。
よくある質問
電話が怖いことを何と呼びますか?
電話恐怖症と呼ばれることがあります。独立した診断名ではなく、多くの場合は電話に向いた社交不安の一つの形です。
電話が鳴るとなぜ不安になるのですか?
かかってくる電話は、準備する時間がなく、表情も見えず、何の用件かもわからないからです。不安を感じやすい心にとって、いちばん苦手な組み合わせです。自分からかける電話から練習を始めると、少しずつ楽になっていきます。
電話恐怖症は治りますか?
多くの人は、定期的に少しずつ練習することで、かなり楽になります。一週間おびえ続ける大きな電話を一本かけるより、小さな電話をこまめにかけるほうが効果的です。
DayDareで練習する
DayDareには、まさにこの一歩のためのお題があります。文字ではなくボイスメッセージで返す、メッセージの代わりに友達に10分電話する、声に出して何かを頼む。どれも、自分のペースで上っていけるはしごの中にあります。どのお題にも、使える言葉と、ひと言しか返ってこなかったときの返し方、断られたときにどうするかが用意されています。
お題の前には、終わったあとどれくらい怖いと感じそうかを予想し、終わったら30秒で振り返りを記録します。日記を見れば、現実が不安の予想よりどれだけ楽だったかがわかります。アカウント登録も広告もAIもなし。サブスクリプションではなく、一度きりの購入です。